テラコッタ(陶器)
土そのものを感じさせる力強い表情、肌に吸い付くような滑らかな質感、モダンな彫刻を思わせる佇まい……そんな豊かな表現をかなえ、ドマーニの根幹をかたちづくる素材が陶器です。
彼らの陶器づくりは採土場からスタートします。多くのプランターメーカーはすでにでき上がった粘土を購入して製品をつくりますが、ドマーニはまずヨーロッパ各地の採土場に足を運び、自分たちの製品に適した土から吟味するのです。
TERRACOTTA
そうして選び抜いた土にカオリン(白っぽい鉱物)や鉄分、顔料などをブレンドして11種類もの粘土をつくり出し、それぞれのコレクションに合わせて使い分けています。陶器の表面にかける釉薬もまた長い年月をかけて開発し、独創的な色彩と、マットなものから金属のような光沢があるものまで幅広いテクスチュアを実現。こうして美しく奥行きがあるプランターをつくり上げているのです。
また、どこまでも実用性を追求し、たとえばアウトドア用のプランターは氷点下でも凍って割れないよう、陶器に含まれる水分量を3〜4%に抑える焼成技術を開発。その昔、ワインの熟成樽に用いられた「アンフォラポット」の特殊な製作技術を取り入れ、防水性の高い粘土を生み出すなどして、耐候性や耐久性をかなえています。陶器は先史時代から器や祭具、芸術品、建材などに使われてきた伝統的な素材。その伝統へ敬意を払いながらも、彼らの斬新なアイデアと尽きることのない探究心を重ね合わせることで、人々を驚かせる製品を届けているのです。
コールテン鋼
月日が流れ、季節が巡り、ときには灼熱の太陽を浴び、ときには雨風に打たれるなかで、命が吹き込まれるコールテン鋼。人々の暮らしとともに表情を変化させる、趣深い素材です。ドマーニとこの素材をつないでくれたのは、ドイツ人アーティスト、ファビアン・ボン・スプレーケルセンでした。現在は主に彼がデザインを手掛ける「CORTINA」シリーズで、コールテン鋼を使用しています。
CORTEN STEEL
コールテン鋼は雨や風、日光に当たることで酸化し、表面に保護膜となるサビを形成します。そのため、屋外で使用しても劣化しにくく、耐候性鋼とも呼ばれています。設置環境によってサビの色の変わり方は異なり、数年かかることもありますが、通常は鋼鉄のダークグレーが鮮やかなオレンジとなり、さらに濃い赤、最後は深い茶色へと変化を遂げます。「CORTINA」では、特殊な表面仕上げにより当初から鮮やかなオレンジのサビを形成させています。その後は、設置環境のなかで自然にサビを発生させて最終形態の深い茶色へと深みを増していきます。サビが定着すると色は変わることなく、その先は何十年も屋外で使用することができます。
楽焼き
繊細で落ち着いた表情を描き、一つとして同じものがない貫入(ひび)入りの陶器。ドマーニを特徴付けるそのデザインは、16世紀の日本の茶器である「楽焼き」を基にしながら、独自の製法で生み出しています。
RAKU
貫入は、釉薬と土の収縮比率の違いから起きるものです。ドマーニでは楽焼きのためにブレンドした粘土を型に入れて成型し、まずは低めの温度で素焼きをしてから釉薬を厚く施してしっかりと乾燥させます。次に楽焼き専用の小さなオーブンでオレンジ色になるまで熱し、職人の目と手で一つひとつのタイミングを見計らって、隣に用意されたおがくずのなかに入れるのです。急激に温度が下がるその瞬間、大きな火柱が上がるとともに、釉薬には無数の筋が入ります。その後、数日をかけてゆっくりと冷まし、丁寧に煤を拭き取ると、美しい貫入が現れるのです。楽焼きの表情は人が作為的につくり出せるものではなく、粘土や釉薬、炎、空気、そして職人の技術などの相互作用によって偶然に生まれるもの。予測や制御が難しいところに、唯一無二の美しさが宿っています。
ジンク(亜鉛)
1998年にドマーニが発表したジンクのプランター。プランターに金属が用いられることがめずらしかった当時、直線的でクールなその製品の登場は衝撃的なものでした。モダンな空間に調和する陶器以外の硬質なプランターを求めていた彼らは、いくつかの金属を試した結果、ジンクという素材にたどりついたのです。
ZINC
ドマーニのジンクは、建物の外装材として用いられるチタン亜鉛板のなかでも4%の銀を含んだ 強度の高いもので、さらに特殊な表面仕上げを施しています。最初は黒く見えますが、水や湿気に触れると自身を腐食から守るために酸化し、保護膜となる粉末状の白サビを発生させます。この変化によるマットなテクスチュアやダークグレーの色合いが、洗練された雰囲気を醸します。さらに時が経つにつれ、くすんだ緑青(青緑色のサビ)を発生して奥行きのある表情に。自然にゆっくりと変化を続けるその姿もまた、美しく魅力的です。 そんな素材の美しさを引き立てるためにシンプルなデザインを追求し、製作には特別なはんだ付けの技術を導入しています。ジンクは加工に必要なエネルギーがほかの金属よりも少なく、リサイクルも可能なため、持続可能な素材でもあります。