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​02.
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TISTOU 代表のヒラタミチコです。

25 年前に花屋になる夢を諦めて TISTOU をはじめました。そんな私が大好きなフローリスト、フラワーアーティストの皆さんにフワラーベースの使い方や、花を活けるコツ、そして花人生についてインタビューしました。

interviewer : Michiko Hirata

photo : Joji Okamoto

TISTOU では、Henry Dean と DOMANI の新作受注会を、ショールーム(2 月・9 月)と東京ビッグサイト(6 月)で年 3 回行っているが、1 年ごとに異なるフローリストに花活けを依頼している。2019 年 9 月からお願いしているのは岡 寛之くん。彼は、コンテンポラリーでアーティスティックな作品が国内外から高い評価を得ている、今注目のフローリストでありデザイナーだ。取材させてもらったのは 2 月の新作受注会の前日、つまり活け込みの日。ショールームに花を活け込むだけでも大変なのに、# FLOWERVASEIDEAS の為の作品を彼は快く、そして淡々と作り上げてくれた。 

この企画では、依頼するフローリストのアトリエやお店を訪ねて撮影させてもらう予定だったが、岡くんには TISTOUのショールームにある大きなフラワーベースにも花を活けてもらうので、折角なので、この機会に一緒に撮影をお願いすることにした。 

活け込みの前日、大きな枝を抱えて岡くんがやってきた。 那須高原の生産者を訪ねて、今回の為にとっておきの花材を揃えてくれたという。 「山に入って花材を切っていた道中で、5mの木蓮の枯れ枝も見つけた」と嬉しそうにショールームに運び入れていく。市場にはない規格外の花材で、彼は一体どんな作品を作ってくれるのだろうか。明日は楽しい1日になりそうと、私たちは胸を高鳴らせた。

 

 

花束(スパイラルブーケ)か投げ入れか、はたまた “ 吸水スポンジ” か  

1 つ目のフラワーベースは「Stromboli S」(ストロンボリS)。彼が選んだのは、マスタード色の【ディジョン】だ。黒いバケツの中からラナンキュラスなどの黄色い花材を集め、茎の下の方についた葉っぱ(下葉)をとって、台の上に並べていく。 全ての花材の下処理が終わると、おもむろに花束を束ね始めた。いわゆる “ スパイラルブーケ ” と呼ばれるものだ。TISTOUの新人スタッフであるはるかちゃんとまりえちゃんは、花とは無縁の世界にいたこともあってか、前回、美穂が行っていた技法と異なることに少し戸惑っている。

​Stromboli

 

「スパイラルブーケは、茎を一方向に螺旋状に束ねていく手法。こうすると、花を束ねていても、隣り合う花同士が折れたり傷ついたりしない。支点(茎を結ぶところ)をずれないように回しながら花を重ねていくと、花束はどんどん大きくなっていく。「Stromboli S」は、美穂ちゃんが活けた “ 投げ入れ(後述)”の手法はもちろんのこと、花束(スパイラルブーケ)を活け込むのに適したフラワーベースだと、個人的には感じています。シリンダー(円筒)型のフラワーベースだと、せっかく束ねた花束の茎がすぼまり、形が崩れてしまいますが、下側が広がっている「Stromboli S」は、束ねたままの状態を保つことができるので。『お祝いに大きな花束をもらったけれど、合わせるフラワーベースがない』とよく聞くので、そういった人にも「Stromboli S」をおすすめしたいですね」。ここで、「これまで花束の紐を解いて活けていました」と、慌てるスタッフのはるかちゃん。ブーケは花のバランスを考えてフローリストが束ねてくれたものなので、できるだけそのままフラワーベースに入れてくださいね。

​Akiko

岡くんは吸水スポンジを使うことがあまりない。その代わりに、枝を使って花留めすることが多いという。 華道でもよく使われるこの方法だが、 今回「AKIKO」(アキコ)では、 枝を使った花留めをあえて見せながら、アイリスを主役としたアレンジを作り上げてくれた。「「AKIKO」 はすごく好きなフォルムですが、正直、どうやって活けるか悩みました。かわいらしい形だからか、花や球根を少しだけあしらう方がいいように思って」。シンプルながら、植物本来の姿を生かしたアーティスティックな造形がなんとも美しく、シックなトーンの枝と優美でみずみずしいアイリスのコントラストがユニーク。 乳白色のガラスに映る枝の影もまた幻想的だ。

「「Joe」(ジョー)はとにかく活けやすい。ほどよい重みがあって安定感があるので、大きなアレンジともバランスがとりやすいですし。今日はきれいなスノーフレイクがあったので、これを活けたくて、花に合わせて色も【アンブロシア】を選びました」。今回は、ボリュームのある「Joe」に、あえて釣鐘状の花を咲かせる繊細な印象のスノーフレークを、コンパクトにあしらった。白い花とペールグリーンの花器がよく合う、やわらかな印象のアレンジだ。フラワーベースは色も形も、主張しすぎないものが好みだという岡くん。「「Joe」の一つ小さいサイズの「Julien XS」(ジュリアン XS)も使いやすい。フラワーベースを一つも持っていないという人は、まずはこの「Julien XS」のように小さな一輪挿しを用意して、家に花の場所を作ってあげるといいと思います。そうすれば、無理のない程度に、花のある生活をはじめられるのでは」。

​Joe

「投げ入れが一番難しいですよね。 今回は横に広がるように投げ入れをしようと考えていて、「Clemence」(クレモンス)は口が斜めになっていて、枝が止まりやすいだろうな、と思って選びました。」投げ入れとは、水を入れたフラワーべースの中に花を投げ入れて作品を作っていく技法のことである。ブーケは花同士が止まってくれるけど、投げ入れは思ったところでなかなか花が止まってくれない。どんどん動いちゃうから、自然に活けるって難しい、でも面白いなぁ、と思って作ってます。 最近は、花が思った位置で止まってくれなかったら、そこじゃなかったんだな、って思うようにしています」。

​Clemence

ちなみに今回クレモンスに活けた枝のほとんどが、那須高原の山で切ってきたものだ。トキンバラ、ユキヤナギ、セイヨウイワナンテン、ウグイスカグラ、そこにバラ(グリーンアイス)が添えられている。自然の中で自由に育った、曲がった茎や枝が、岡くんの手によって、フラワーベースの中のそれぞれがあるべき場所に美しく収められた作品に仕上がった。

サッカー少年、 高校を辞めて花屋を志す

 

現在はフローリスト、デザイナーとして活躍する岡くんだが、高校時代にはサッカーに夢中だったという。だが、サッカーを辞めた途端、高校に通う意味が持てなくなってしまう。そんな彼が退学の口実として選んだのが、生花店で働くことだった。「手に職があれば、いつか何かの役に立つだろうという軽い気持ちでした 。でも、勤めた生花店が主に仏花を扱う店だったこともあり、次の一手を打たなくてはと」。花を活けるためには空間のことを知る必要がある。だからまずはインテリアの勉強をしたいと生花店の店主に直訴。そうしてインテリアの専門学校へ入学したことが、大きな転機となった。

 

「先生からは『花を活けるためにインテリアを学ぶなんて、目的意識が高いわね』と褒められたり、実習でカフェに花を活けさせてもらったら、 オーナーさんに感謝されたり。それまで、自信を持って好きと言えなかった花を、少しずつ好きになっていくきっかけになりました。花が自分を他の生徒とは違う特別な存在にしてくれた気がして」。もちろん、専門学校で学んだ図面制作やグラフィックデザインのスキルは、現在の仕事にもつながっている。

広島からデンマーク、そして東京へ 

 

専門学校卒業後は、広島県内にある生花店に就職。仕事を終えた夜9時ごろから深夜の2時、3時まで、毎日作品を一つ作ることを目標に、花と向かい合った。「オーナーには今でも感謝しています。花材代は支払っていたものの、電気代だってかかっていたはずだから。最近になって、なぜ自由にやらせてくれたのか尋ねたら、『勝手にやって勝手にうまくなるんだから、それに越したことはないわよ』って」。もう一つ、オーナーに感謝していること。それは、在籍中、デンマークへ修行に行かせてくれたことだ。

 

24 歳の時、観光で訪れたコペンハーゲンで、写真集を見て憧れていた著名なフローリスト、ターゲ・アンデルセンの元を訪ね、「1日働かせてほしい」と願い出ると、あっさりと受け入れられたのだ。さらに驚くことに、「長く働きたいなら住むところの準備はするよ」とオファーを受けたのだ。いったん帰国し、オーナーに許可を取り、2ヶ月後に再びデンマークに渡った。

 

「とにかく仕事の規模の大きさに驚く毎日。 段取りを一つ間違えると大変なことになるから、 念入りな準備を要しました。 当時は言われたことをこなすのに必死でしたが、最近、日本で大きな仕事を任されるようになって、こんな風にやっていた先輩がいたなぁって、思い出しながら仕事に取り組んだりしています。若いころ、そういう現場に立ち会えたことは大きな財産。そしてなによりも高いレベルの仕事を間近で体感し、 彼らの価値観と美意識に触れることができた。その美意識の高さが、今でも自分の作品づくりの中で一つの基準となっています」。帰国後は再び広島の生花店へ。そして、オーナーが引退するのを機に、上京することを決断した。

​日本中の産地を知ることの大切さ

東京ではフラワースクールでのアシスタントを経て、花市場の仲卸で働いた。「地方の生産農家の調査をメインに、仲卸の通常業務を担当。 セリのある月・水・金曜は深夜 1 時に出社し、市場で夕方まで働き、翌日は朝イチの飛行機で地方の生産農家を回るという日々を過ごしました。たくさんのフローリストと知り合えて、地方の生産農家さんとのネットワークも広がりました」。

 

今回の新作受注会の活け込みでも、岡くんは自ら那須高原の生産者を訪ね、市場に流通していない自然の姿に近い花材を持ってきてくれた。 流通の関係から、市場では、曲がっていたり、太すぎたりといった規格外のものは取り扱われない。だから、自らの足で花材を探しに行くのだ。「花材は何よりも大事。どこにでもある、手に入りやすい花で活けることも一つの技術だけど、より良い花材にこだわって、より良い作品づくりを目指すのがプロだと思っています」。 

今でも、生産者の情報には常にアンテナを張っているという岡くん。「いい花材を持つ生産者さんをもっと多くの人に知ってもらいたいし、もっと売れたらいいなって思っています。 規格外のものは大量生産できるものではないから、 悩ましいところなんですけどね」。そんな話を聞きながら、昨年、軽井沢の装飾の仕事で、岡くんと一緒に山へ落ち葉や枯れ枝を探しに行った時の、楽しそうなうしろ姿を思い出した。 

 

 

​プロフェッショナルということ

2013 年にはベルギーの出版社、Stiching Kunstboe から、単独作品集『HiroyukiOka MONOGRAPH』を発行し、花の国際コンペ 「International Floral Art 0708」で受賞歴もある岡くん。20代のころは自身の作品づくりに没頭し、3ヶ月に一度、花の写真家である中島清一氏に撮影してもらっていたという。「当時全盛期だったダニエル・オストの影響を受けて、花材をひたすら編んだり組んだりしていました 。 中島さんには『いくらダニエルを追いかけても勝てないんだから自分のスタイルを追求したほうがいい』と言われたものですが、今思うと、あれは一つのスタイルで、コツコツ作ることを極めないと、あのスタイルを表現することはできない。 楽をしたら絶対に美しいものはできないんです。20代のころにそれを身につけられてよかったなと思っています」。彼の作品は国内外で高く評価され、現在も写真集のオファーを受けているのだという。

そんな岡くんが今一番楽しいことは、若いフローリストと共に仕事をすることだ。「今、生花店のコンサルティングに携わっているのですが、そこの若手フローリストたちはやる気もセンスもある。でも、大きな仕事の経験がないから、現場での動きや動線の考え方、チームの役割分担がわからず、事前の準備が出来ていないことも多い 。今は、デザインや花の技術よりも、そんなことを伝えています」。

岡くんの動きには無駄がない。 一流と呼ばれる人に共通することだと思うが、一つのものを作り上げるというゴールへ向けて様々なことが想定され、完璧な準備がなされているのだ。20代から高いレベルの経験を数多く積み、身につけてきたスキルであることは間違いない。そして、仕入れる花材へのこだわりは、プロとしてあるべき姿だろう。それを、フローリストとしてぜひ若い世代へ伝えていって欲しいと思うところもありながら、個人的には近い将来、彼が手掛ける次の写真集を見てみたいと思っている。

 

 

​岡 寛之

Hiroyuki Oka Design

現在、フリーランスとして活動するデザイナー。

広島の花店『FleuR AtelieR 談』において荒井楓久香に師事、花を学ぶ。

24歳の時に渡欧し、コペンハーゲンの巨匠ターゲ・アンデルセンの元で研修。

帰国後は世界有数の規模を誇る大田市場内の花の仲卸『フローレ 21』に勤務。

HP:https://www.hiroyukioka.com

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今回の撮影で使った Henry Dean と使用した花材 

1.V.Clemench high M/ スモーク(H 26.5)¥12,500

トキンバラ / ユキヤナギ / グリーンアイス(バラ )/ セイヨウイワナンテン / ウグイスカグラ 

3.V.Joe/ アンブロシア(D 6.5 W11 H16)¥5,200

スノーフレイク / 豆の花 / シレネ・グリーンベル / ユキヤナ ギ / ルピナス

2.Stromboli S/ ディジョン(D12 H21)¥13,800

ラナンキュラス / アカシア / カランコエ / パンジー /トキンバラ / シンビジューム / アンスリウム / カランコエ / セイヨウイワナンテン

4.Akiko L/ヴェナート(D14 H13)¥9,200

アイリス

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