Jules Interview
interviewer : Michiko Hirata
text : Kyoko Furuyama
TISTOUが2024年2月から取り扱いをスタートした、ベルギーのインテリアブランド「Ju(ジュー)」。2019年に誕生し、現在世界30カ国で展開する気鋭のブランド「Ju」を率いるジュールズに、TISTOU代表の平田倫子がインタビューを行いました。実は、ベルギーのフラワーベースブランド、Henry Deanの創始者でアーティストのヘンリー・ディーンを祖父に、現在Henry Deanを主宰するジムとヴァネッサを両親にもつジュールズ。彼が自身のブランドを立ち上げたきっかけは? そして「Ju」がこれから目指すものとは?
ガラスとドローイングに親しんだ幼少期
ーーーこんにちは、ジュールズ。「Ju」をTISTOUで紹介できること、本当にうれしく思います。まず最初に、ジュールズが自身のブランド「Ju」をスタートしたきっかけを改めて聞かせてください。
ジュールズ 僕は幼少期からHenry Deanを主宰する父と母が働く倉庫で遊んだり、祖父や母がドローイングを描くそばで絵を描いていました。そのころから、色や写真、アートにすごく興味を持っていたんだ。同時に、父の姿を見ていたから会社を経営することにも関心があって、インターナショナルビジネススクールでビジネスを学ぶことにしたんです。
そのスクールの卒業前の最終プログラムが、どこかの企業に通ってビジネスを勉強する、もしくは自分で会社を立ち上げるビジネスプランを作るというもので、僕は後者を選ぶことにしたんだ。Henry Deanという父の会社はあるものの、自分でゼロから作ってみたいと思い立ってね。それが2019年、22歳のときだった。
ーーーそのビジネスプランをそのまま実現させたのが「Ju」なのですね!
そうなんだ。ビジネスを勉強するためにビジネススクールに通いながらも、クリエイティブに対する愛情や関心は変わらなかったからね。最初に作ったプロダクトがフラワーベース「Celia」。そこから少しずつプロダクトを増やしていって、パリやハンブルグなどの展示会に小さなブースで出展するところから始めたんだ。
東欧の手吹きガラスがもつ
ひとつひとつの個性を活かして
ーーー「Ju」はTISTOUで紹介するフラワーベースのほかに、照明や家具も展開していますね。なぜライフスタイルに関するプロダクトを作ろうと思ったのでしょうか?
ジュールズ 当然ものづくりをしている家庭で育ったことが大きく影響しているんだけれど、僕は学生のころ、引っ越しが多くてね。引っ越しをすると、まっさらな空間に家具などを置いて少しずつ埋めていくでしょう? それがすごく好きだし、面白かった。今思うと、「住む」ことに興味をもつきっかけだったよ。
ーーー「Ju」のデザインはすべてあなたが手掛けているのですか?
ジュールズ はい。プロダクトはすべて僕がドローイングを描いて、工場や職人たちと試作を繰り返して作っているんだ。僕はブランドのディレクターであり、デザイナーであり、経営者でもある。それに、セールスもやっています。全部やるのが好きなんだ。とはいえ、叔母がお客様とのやりとりやシッピングの手配などをフォローしてくれているよ。おかげで楽しんで仕事をさせてもらっているよ。
ーーーデザインは、どんなところからインスピレーションを得ているのですか? また、デザインを生み出すために、自身の生活で大切にしているライフワークがあればぜひ教えてください。
ジュールズ インスピレーションのもとを尋ねられるといつも答えに困るんだけど、色に関していえば、明るい色を表現したいと思っているんだ。僕は昔からなぜだか明るい色に惹かれて、自分の部屋でも好んで使うんだ。明るい色は人を幸せな気持ちや楽しい気分にさせてくれるからね。
それに、市場にあるフラワーベースはクリアやブラック、ホワイトなどの無彩色のものが多いから、自分がフラワーベースをつくるなら、明るい色を使いたいと思ったんだ。彩色はもちろんペイントでなく、染料をガラスにまぜて作っています。そうすることで退色したりせず、美しい色がずっと保たれる。
自分のクリエイティブにとって大事なのは、スポーツを毎日することかな。ランニング、フィットネス、フットボール……。それをすることでリラックスして、「無」になる。そうすると、いろいろなアイデアが湧き出てくるんだよ。
ーーーなるほど、ジュールズにとってインスピレーションの源になっているのは体を動かすことなのかもしれないですね。無になることは、脳にいいと聞いたことがあります。「Ju」のフラワーベースは、すべて手吹きガラスで作っているのですか?
ジュールズ はい。ルーマニアやチェコなど東欧の手吹きガラスの技術で作っています。そこは絶対に譲れない部分。僕は機械で何千個も作ることにはまったく興味がないんだ。手吹きガラスはクラフツマンシップによって作られ、ひとつひとつが個性をもちますよね。そこが魅力だし、僕がやりたいこと。
それと、Henry Deanと同様に、原料にリサイクルガラスを使うことにもチャレンジしています。現在、フラワーベースの60%はリサイクルガラスで作られています。
みずみずしい感性で生み出す
ダイナミックなデザインと明るくパワフルな色
ーーークリエイションにおいて、ジュールズのお祖父様、ご両親から影響を受けていることはありますか?
ジュールズ ドローイングに関しては祖父と母から影響を受けています。さっきも話したけれど、小さいころから僕はガラスが並ぶ倉庫で遊んでいたし、祖父や母がドローイングを描いている姿も、ガラスをどんなふうにデザインしてきたかもはっきりと覚えているから。自分の部屋には祖父のドローイングもたくさん飾っていますしね。
でも、影響を受けているのはクリエイティブ以外のところも大きいんだ。父からはセールスやコミュニケーションの部分でとても刺激を受け、会社を営むことに興味をもったから「Ju」を始めることができた。「Ju」を立ち上げるとき、両親に相談したところ、喜んで賛成してくれたし、アドバイスもたくさんくれて。とても感謝しているよ。
ーーー「Ju」として表現したいのはどんなことでしょうか? また、もしもHenry Deanのクリエイションと差別化している点があれば教えてください。
ジュールズ Henry Deanのフラワーベースと同じ工場で作るプロダクトもあるので、近い表現に感じられるかもしれないけれど、「Ju」はみずみずしい感性で、ダイナミックなデザインと明るくてパワフルな色を生かした、コンテンポラリーなプロダクトを目指していきたい。
それと、ブランドとしてどう表現するかというマーケティングも大事だと思っていて、フォトグラファーやスタイリスト、グラフィックデザイナーなど、それぞれにアイデンティティをもつ友人のクリエイターたちの手を借りながら、独自の表現を試みています。「Ju」ができるのは自分だけの力だけでなく、家族やそうした友人のサポートがあってこそだと思ってるよ。実はフラワーベースの名は友人の名前が由来。友人の名前のフラワーベースが完成したら、その友人のもとに持って行って一緒にごはんを食べることにしているんだ。
ーーー最後に、これから「Ju」が目指していきたいことがあれば教えてください。
ジュールズ 今のラインナップはフラワーベースがメインだけど、照明や家具もたくさんクリエーションしていきたい。日本のTISTOUをはじめ、世界の素敵なショップに「Ju」を届けられたらうれしいですね。